世界各国のお葬式にまつわるしきたり、風習をご紹介するコラム。
今回は、シンガポールのお葬式についてご紹介します。
シンガポールは、東南アジアに位置する共和制国家で人口は約592万人、面積は東京23区よりやや大きいと言われています。
公用語は英語、中国語、マレー語、タミル語で、通貨はシンガポール・ドル。
宗教は、仏教、道教、イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教など様々です。
シンガポールは儒教文化を持つ華僑の力が非常に強く、古式に則った伝統的な葬儀が行われてきましたが、ここ数十年の間にお葬式が合理化・カジュアル化してきているそうです。
昨今のシンガポールでは、お亡くなりになったご遺体はすぐにケアセンターに運ばれ、エンバーミング(防腐処置)を施されます。その後、およそ1週間「Wake(通夜のようなもの)」が行われ、埋葬または火葬されます。
Wakeは、公営住宅の地下の会場か、葬儀場または家の外に設営されたテントの内側で行われるのが一般的です。テントの中には納棺された故人と祭壇、小さな椅子とテーブルがあり、コーヒーセットやピーナッツなどが置かれます。
参列者は喪主に挨拶をしてお線香をあげ、テーブルの前でご遺族や弔問客が故人を偲んで談話をする流れで、日本のように時間が決まっておらず、いつでも故人の顔を見にいけるのが特徴です。
故人が亡くなってから最低4日間はWakeが行われ、喪主はその間、基本的に在席し続けなければならないそうです。5日目になると、厄除けとして派手な音楽を流し、特別に飾り付けられた車に棺を乗せて火葬場に向かいます。
火葬場では、音楽が奏でられる中、お別れの儀式が行われます。棺を焼却炉へ送り出した後、ご遺族たちはバスに乗ってテントにもどり、テント内で魔除けの効果が高いと言われる菊の花やザクロの枝が使った水で、手や顔、首筋などを浄め、解散するそうです。
シンガポールでは1998年に法律が改正され、墓地への遺体の埋葬は15年間という期限が設けられました。この法改正により、昨今では火葬が主流になりました。お墓はスペース確保のため、壁面収納タイプになってきているそうです。
独自の風習を有するシンガポールのお葬式。
シンガポールでは、故人がこの世に未練を残さずにあの世に渡れるように、遺族達はできるだけ陽気に振る舞い、賑やかに故人を送り出すよう心がけていると言われます。
日本のお葬式とは異なる部分を感じますが、大切な人を偲び、心を込めて送り出す気持ちに変わりはなく、素晴らしい風習がこれからも長く続いていくことを願います。